材料商社からメールで届く請求書のPDF。通販サイトからダウンロードした領収書。これらを印刷して、紙のほうだけをファイルに綴じているなら、法律の求めとは形が違っています。この記事は、条文と省令から、何をどこに残す決まりなのかを並べます。
義務は、たった1条です
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)の 第7条が本体です。誰にかかるかが先に書かれていて、対象は所得税(源泉徴収に係るものは除かれます)と法人税に係る保存義務者。その人が電子取引を行ったときに、財務省令の定めに従って、取引情報に係る電磁的記録を保存する義務が生じます。
ここで大事なのは「電子取引」が何を指すかです。同法 第2条 第5号が定義していて、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引、とされています。その取引情報も同じ号の括弧の中で定義されており、取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、そしてその他これらに準ずる書類に通常記載される事項、と書かれています。
「その他これらに準ずる書類」は、包括的な例示の形です。同号によれば、先に並んでいる書類は例であって、そこで打ち止めという書き方ではありません。紙をやりとりしなかった取引は、おおむねここに入ってきます。
どこに、どれだけ残すか
中身は 同法施行規則 第4条 第1項にあります。場所と期間の決め方が独特です。仮にその取引情報を書面で受け取っていたら、あるいは書面で送ってその写しを作っていたら、国税に関する法律の規定によって、その紙はどこに、どれだけ置くことになっていたか。条文は、その場所と、その期間をそのまま持ってきます。
紙だったらどうだったか、を物差しにしている形です。データ専用の別ルールがあるわけではありません。
4つの措置から、どれか1つ
同項は、次の4つの措置のいずれかを行うこととしています。
- 第1号 ── 記録事項にタイムスタンプが付されたあとで、その取引情報の授受を行う
- 第2号 ── 自分でタイムスタンプを付ける。イは、授受のあと速やかに付ける方法。ロは、業務の処理に係る通常の期間が過ぎてから速やかに付ける方法で、こちらには条件があり、授受からタイムスタンプを付すまでの各事務について、その処理に関する規程を定めていることが要ります
- 第3号 ── 次のどちらかを満たすシステムで、授受と保存の両方を行う。イは、直したり消したりしたときに、その事実と内容を後から確認できること。ロは、そもそも直すことも消すこともできないこと
- 第4号 ── 正当な理由のない訂正と削除を防ぐための事務処理の規程を作り、それに沿って運用し、記録の保存とあわせてその規程を備え付ける
タイムスタンプの仕組みも、専用のシステムも持っていない医院が選ぶことになるのは、第4号です。同号が求めているのは3つで、規程を定めること、その規程に沿って運用すること、そして規程を備え付けることです。作って引き出しにしまう、では条文の3つ目までしか届きません。
見られる状態と、探せる状態
措置のほかに、満たすべき要件が3つ引かれています。1つ目は 同規則 第2条 第2項 第2号で、いつでも中身を見られる状態にしておけ、という趣旨です。保存する場所に、電子計算機とプログラム、ディスプレイ、プリンタ、そして操作説明書を置くこと。そのうえで、画面にも書面にも、整然とした形式で、明瞭な状態で、速やかに出せるようにしておくこととされています。
2つ目は検索の機能で、第2条 第6項 第5号が3段構えで書いています。イは、条件に使える項目の話。取引年月日その他の日付と、取引金額と、取引先の3つを条件として設定できること。ロは、そのうち日付と金額について、範囲を指定した設定ができること。ハは、任意の記録項目を2つ以上 組み合わせた設定ができることです。
この検索の機能には、外れる場合が段階的に用意されています。まず、データの提示や提出の求めに応じられるようにしている場合、ロとハが外れます。さらに、その状態にあったうえで次のどちらかに当たると、第5号そのものが外れます。ひとつは、売上高で見る道です。判定期間に係る基準期間で、その額が5,000万円以下の事業者であること。もうひとつは、出力した書面の提示・提出に応じられるようにしていることです。この書面には条件が付いていて、整然とした形式で明瞭に出力されており、かつ、取引年月日その他の日付と取引先ごとに整理されているものに限られます。
3つ目は、第2条 第6項 第6号が準用する 第2項 第1号のうち、イに係る部分です。イが指しているのは、電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付けです。ただし 第1号の柱書に、保存義務者が自分で開発したプログラム以外のプログラムを使う場合には、イとロの書類を除く、という定めが置かれています。市販のソフトやメールソフトを使っている医院は、この柱書の除外にあたるかどうかを、まず見ることになります。
同項によれば、外れるのは検索の機能の要件であって、電磁的記録を保存する義務そのものではありません。基準期間の考え方は同条 第2項にあり、個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度とされています。
「相当の理由」の扱いも、条文にあります
第4条 第3項が、その場合の定めです。入口は2つあります。ひとつは、災害をはじめとするやむを得ない事情のせいで第1項の形での保存が果たせなかった、と証明した場合。もうひとつは、納税地等を所轄する税務署長が、その保存を果たせなかったことに相当の理由があると認めた場合。ただし後者には条件が付いています。データそのものと、それを出力した書面について、提示や提出の求めに応じられる状態にしておくこと。書面のほうは、整然とした形式で、明瞭な状態で出力されたものに限られます。これらに当たるときは、第1項によらない形で、データを保存することができる ── 条文はそう結んでいます。
ここは読み違えやすいところです。結びは「保存をすることができる」であって、紙だけで足りる、とは書かれていません。提示や提出の要求に応じるには、データが手元にあることが前提になります。
同項には但し書きも付いています。仮にその事情がなかったとしても、あるいはその理由がなかったとしても、どのみち第1項のとおりには保存できなかっただろう、と認められる場合には、この扱いは使えません。事情や理由が、保存できなかったことの原因になっていることが前提だ、という作りです。
電子取引のデータを、今日見直す手順
以下は、上に並べた条文から当社が整理した確認の順番です。条文がこの順序を定めているわけではなく、これですべてでもありません。
- 紙をやりとりしていない仕入れ・支払いを、書き出せるか ── 材料、通販、サブスク、決済サービスなど
- そのPDFやデータが、いまどこにあるか ── 受信箱の中だけ、になっていないか
- 取引年月日、取引金額、取引先で探せるか
- 4つの措置のうち、どれを選ぶか ── 第4号を選ぶなら、規程を作って、運用して、備え付ける
- 画面と紙の両方に、速やかに出せる状態にあるか
- 前々年(法人は前々事業年度)の売上高がいくらか ── 検索の要件の分かれ目に出てきます
まとめ ── 印刷は、置き換えではありません
電子取引の取引情報は、電磁的記録のまま保存する。場所と期間は、紙で受け取っていたらどうだったかで決まる。措置は4つのうち1つ。要件は3つで、見られる状態、探せる状態、そしてシステムの概要を記した書類です。検索の要件には外れる場合があり、その分かれ目のひとつが5,000万円です。印刷して紙で綴じる作業は、条文の中では、電磁的記録の保存の代わりとして置かれていません。いま紙に出しているなら、データを捨てていないかどうかが、最初に見る場所になります。
参考にした情報源
- デジタル庁 e-Gov法令検索 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号) ── 第2条、第7条
- デジタル庁 e-Gov法令検索 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(平成十年大蔵省令第四十三号) ── 第2条、第4条
この記事は、法律と省令の条文に書かれている部分を並べたものです。国税庁は一問一答と取扱通達を公表しており、実務ではそちらもあわせて読むことになります。帳簿の電子保存、スキャナ保存には、それぞれ別の要件があります。条文は改正で変わります。実際の運用を決める前に、国税庁の案内と、顧問の税理士にご確認ください。
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