医院のホームページは、医療法でいう広告です。条文は、どんな方法によるかを問わない、という書き方をしています。紙とウェブを分けていません。そして虚偽の広告は、第87条で 6月以下の拘禁刑か 30万円以下の罰金の対象と定められています。今回は、条文と厚生労働省の資料が「書けない」と名指ししているところだけを並べます。当社の判断は入れません。
ホームページも、条文の射程に入っています
根拠は医療法の第6条の5です。第1項は、医業や歯科医業、病院や診療所についての広告をする人に対して、虚偽の広告を禁じています。ここでいう広告を、条文は「医療を受ける者を誘引するための手段」としての表示だと説明していて、文書でも、それ以外のどんな方法でも構わないと書き添えています。
読みどころは2つあります。ひとつは、方法を問わないと言い切っているところ。看板もチラシもホームページも、同じ条文の下にあります。もうひとつは、受診を誘う目的で外に出した表示は広告になるという定義のしかたです。「これは広告ではなく院内のご案内です」という線引きは、条文の書き方からは出てきません。
条文が挙げている基準は、4つです
第6条の5第2項は、広告の内容と方法が守らなければならない基準を、号に分けて挙げています。医院の言葉に置き換えると、こうなります。
| 条文の号 | やってはいけないこと |
|---|---|
| 第2項第1号 | よその病院や診療所と比べて、自院のほうが優れている旨の広告 |
| 第2項第2号 | 誇大な広告 |
| 第2項第3号 | 公の秩序や善良の風俗に反する内容の広告 |
| 第2項第4号 | そのほか、厚生労働省令で定める基準に外れるもの |
第4号の「厚生労働省令で定める基準」のところに、禁止される事項の具体が置かれています。患者の体験談や、誤認させるおそれのある治療前後の写真は、ここにぶら下がっています。条文の本体だけを読んでも、禁止の全部は見えません。省令と、厚生労働省の指針まで開いて、やっと並びます。
罰は、どこにかかるのか
ここは道筋が分かれるので、順に書きます。医療法の第87条第1号は、第6条の5第1項に違反した場合を、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象としています。第1項は虚偽広告の禁止ですから、虚偽の広告は、行政からの命令を待たずに罰則の側に入ります。
もうひとつは、第2項の基準(比較優良・誇大など)や第3項に外れている場合です。第6条の8第2項が、都道府県知事や、保健所を置く市の市長、特別区の区長に、期限を切って広告の中止や内容の是正を命じる権限を与えています。そして第87条第3号が、その命令に従わなかったときを罰則の対象にしています。いきなり罰が来るのではなく、命令が先に来る形です。
同じ第6条の8の第1項には、違反のおそれがあると認めるときに、報告を命じたり、職員が事務所に立ち入って広告に関する文書などを検査したりできる、とも書かれています。ホームページの表現は、行政が見に来られる対象だということです。
そもそも「書いてよい事項」が限られています
ここが、ほかの業種と決定的に違うところです。第6条の5第3項は、号に挙げた事項以外の広告をしてはならない、という作りになっています。禁止リストさえ避ければ何を書いてもよい、ではありません。書いてよいものが先に決まっていて、その外は原則として出せない。順番が逆なのです。
号に並んでいるのは、たとえば医師・歯科医師である旨、診療科名、医院の名称と電話番号と所在地、管理者の氏名、診療日や診療時間、予約診療をしているかどうか、従業者の員数、医療従事者の氏名や略歴のうち厚生労働大臣が定めたもの、といったものです。設備と体制の話が中心です。治療の中身については、検査や手術などの方法のうち厚生労働大臣が定めたものに限る、と条文が絞っています。
ウェブで広げるときの、4つの条件
では、自由診療の説明ページはどうして成り立っているのか。医療広告等ガイドラインが「広告可能事項の限定解除」という仕組みを説明しています。患者が自分から探して読む情報については、きちんと届くようにする必要がある、という考え方にもとづくもので、省令の要件を満たしたときに、書ける事項の限定を外せる、というものです。
指針は①から④までを挙げ、そのいずれも満たしたときに限るとしています。③と④は、自由診療について説明する場合にだけかかります。以下は、指針の書いていることを当社が短くまとめたものです。
- 患者が自分から探して読む形の情報であること。ウェブサイトや、それに準じるものが当たります
- 書いてある中身について、患者がすぐ問い合わせられるように、連絡先を明示していること
- (自由診療のとき)ふつうに必要となる治療の中身と、費用について説明していること
- (自由診療のとき)主なリスクと副作用について説明していること
①には、はっきりした注意書きが付いています。ネット上のバナー広告や、検索結果にスポンサーとして出るもの、検索サイトの運営会社にお金を払って意図的に上位に出している状態のものについて、指針は、これらは①を満たさないとしています。同じ文言でも、置いた場所で扱いが変わるということです。リスティング広告を回している医院は、ここを一度 確かめる値打ちがあります。
②の連絡先について、指針が例に挙げているのは電話番号とEメールアドレスです。③は、治療の名前と最低限の中身・費用だけを載せて終わりにしないこと、と念を押しています。指針が挙げているのは、ふつうに必要となる治療内容、標準的な費用、治療の期間、回数です。標準的な費用がはっきりしない場合は、最低いくらから最高いくらまで、という幅で示すやり方が示されています。
④は、いいところばかりが目立って、リスクの説明が薄い状態を避けること。そして③④に共通して、指針はどこに、どの大きさで書くかにも注文を付けています。リンクの先のページに逃がすことや、利点の説明に比べて極端に小さい文字で載せることを、採ってはいけない形として挙げています。書いてあるかどうかだけでは済みません。
この4つの条件を、自由診療の料金を見直す場面に当てはめた話は、自由診療の値上げ、患者にどう伝えるかに書いています。
解説書が載せている、自院でも起こりうる画面
厚生労働省の医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書は、ホームページの画面を模した図に、どこが問題なのかを書き込む形で作られています。歯科医院の画面も複数 出てきます。ここでは、自院のサイトでも起こりうる形を4つ挙げます。
- 「全ての治療が1日で終了する」という書き方── 定期的なメンテナンスが要るのにそう書いている例が、実態と異なる表現として、虚偽広告のところに置かれています
- 手を入れた治療前後の写真── 実際には施術していない素材写真やイラストを使ったり、人物写真を割って片側だけきれいに直したりして、治療の成果のように見せる例が挙がっています
- どの治療を指すのか分からない診療科名── 「審美歯科」のような表記が、いろいろな治療の方法を含んでいて、そのどれを提供するのかが明確でない、として誇大広告の側に挙げられています
- 物をあげる旨の記載── 提供する医療とは直接 関係のない事項で患者を誘うものとして、注意が要る事例に入っています。これは歯科の画面ではありませんが、治療後のごほうびに物を渡す例が挙がっています
診療科名の例には、直し方まで書かれています。解説書によれば、診療科名として広告できるのは、政令に並んでいるものか、その診療をする医師が大臣の許可を得たものに限られます。ただし、事例解説書は、限定解除の要件を満たせば広告できるとしています。「審美歯科」という語を出すなら、その下で、どの治療を提供するのかをはっきり書き、自由診療なら③④まで揃える。消すのではなく揃える、という直し方です。
なお、患者の体験談の扱いにも、省令の禁止事項が別にあります。こちらは分量が要るので、日を改めて書きます。
今日、自院の画面で確かめられること
- 自由診療のページを開いて、4つ揃っているか見る。ふつうに必要となる治療の中身、標準的な費用(または最低額から最高額までの幅)、期間、回数。ひとつでも欠けていたら、そこが指針の③です
- リスクと副作用が、同じページにあるか見る。リンクの先に逃がしていないか。利点の説明より極端に小さい文字になっていないか
- 連絡先が、そのページから分かるか見る。指針が例に挙げているのは電話番号とEメールアドレスです
- 写真の出どころを確かめる。自院で撮ったものか、素材集のものか。手を入れたかどうかも含めて、誰が答えられるかを決めておく
- 広告を出しているなら、その飛び先も見る。バナーや検索連動広告そのものは、指針が①に当てはまらないとしています
どれも、制作会社に連絡する前に、院長の画面で確かめられます。そのうえで直すかどうかは別の話です。個々の表現が違反に当たるかどうかを判断するのは、当社ではなく行政です。気になる表現が出てきたら、書き出したものを持って、都道府県や保健所の窓口に確かめてください。
参考にした情報源
- デジタル庁 e-Gov法令検索 医療法(昭和二十三年法律第二百五号) ── 第6条の5(広告の定義・基準・広告してよい事項)、第6条の8(報告命令と立入検査、中止・是正命令)、第87条(罰則)
- 厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン・令和8年3月30日最終改正)── 広告可能事項の限定解除の要件、掲載場所と文字の大きさについての記載
- 厚生労働省 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版・令和8年3月作成)── 歯科医院の画面を含む個別の事例と解説
- 厚生労働省 医療法における病院等の広告規制について ── 指針・Q&A・事例解説書の掲載場所
※ この記事は、上に挙げた資料を当社が確認した時点の記載だけをもとに書いています。条文も指針も改正されます。最終確認は、そのときの原文でお願いします。
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