看板とホームページで、名前が違っていないか

看板とホームページで、名前が違っていないか

看板は「○○歯科」、ホームページの見出しは「医療法人○○会 ○○歯科医院」、Googleに出てくるのは「○○歯科クリニック」。同じ医院なのに、名前が3通りある。このうち、直さなくてよいものと、直したほうがよいものが分かれます。分かれ目は、医療法と医療広告ガイドラインに書かれています。

目次

医院の名称は、広告してよい事項のひとつ

読んだのは、医療法と、厚生労働省の医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)です。

医療法 第6条の5 第3項は、広告してよい事項を号で列挙しています。その第3号に置かれているのが、病院または診療所の名称、電話番号、所在の場所を表示する事項、そして管理者の氏名です。医院の名前は、看板にもホームページにも出してよい事項として、はっきり条文の中にあります。ここは迷う必要のない部分です。

略称も英語名も、使ってよいとされています

では、看板とホームページで表記が違うこと自体はどうか。ガイドラインは、この第3号の説明のところで踏み込んで書いています。医療機関の名称として広告できるのは正式なものだけに限られず、その医療機関だと分かる略称や、英語の名前も差し支えない、という趣旨です。医院のマークや名称が入った看板を撮った写真を載せることについても、同じ箇所で認められています。

つまり、看板が「○○歯科」でホームページが「医療法人○○会 ○○歯科医院」になっていること自体は、それだけで問題として扱われる話ではありません。患者がどちらを見ても同じ医院だと分かるかどうかが、実務上の分かれ目になります。表記を1つに統一する作業は、法律のためというより、患者が迷わないための作業です。

ただし、病院に紛らわしい名前は付けられません

名前そのものに、条文の制限がかかっている部分があります。医療法 第3条 第2項は、診療所に対し、病院や病院分院、産院、そのほか病院と紛らわしい名称を付けることを禁じています。同条 第1項は、そもそも病院でも診療所でもない場所が、診療所や医院に紛らわしい名前を名乗ることを禁じています。

歯科医院の看板でこの条文にぶつかるのは、名前を新しく決めるときです。分院の名前を考えるとき、あるいは法人名を決めるときに、先に当たっておく条文になります。ここは「紛らわしいかどうか」の判断なので、思いついてから確かめるより、候補を出す段階で条文を横に置くほうが早く済みます。

名前の後ろに付ける「○○科」は、別の話です

看板とホームページの食い違いで、実際に効いてくるのはこちらです。診療科名は、名称とは別の号で扱われており、名乗ってよいものが政令で決まっています。医療法施行令 第3条の2 第1項 第2号が、歯科医業について広告できる診療科名を定めた部分です。

そこに置かれているのは、まず「歯科」。そして、歯科と、患者の年齢を示す名称とを厚生労働省令の定めに従って組み合わせたもの。さらに、歯科と、矯正や口腔外科など、歯科医学的な処置のうち特定の領域を表す用語として厚生労働省令で定められたものを組み合わせたものです。組み合わせについては、歯科医学的知見と社会通念に照らして不合理になるものが省令で除かれる、という但し書きも付いています。

ガイドラインのほうは、この裏返しを具体例で挙げています。歯科に関係する名称として名指しされているのは「インプラント科」や「審美歯科」です。これらは法令に根拠のない名称だとされています。そのうえでガイドラインは、逃げ道を先に塞いでいます。ガイドラインは、法令に根拠のない名称を広告できる診療科名と並べて書いても、その広告は認められないとしています。「歯科・インプラント科」と並べれば通る、という書き方は用意されていません。

名前やキャッチフレーズ自体が、広告と見られることがあります

ガイドラインには、暗示的または間接的な表現の扱いという節があります。情報全体を見たときに、一般の人が広告だと認識しうるものは医療広告に含まれる、という考え方が示されており、その最初の例として挙がっているのが、名称やキャッチフレーズによって表示するものです。医科の例ですが、「アンチエイジングクリニック」という名前そのものが具体例として挙げられています。

医院の名前を決めるとき、治療の内容を表す言葉を入れたくなることがあります。その言葉が診療科名として認められていないものであれば、名前に入れた時点で、名前のほうが広告として読まれることになります。看板とホームページのどちらを直すかという話の前に、その言葉を使うかどうかの判断が先に来ます。

掲示のほうには、場所まで決まっています

もうひとつ、名前とあわせて確かめておきたいのが院内の掲示です。医療法施行規則 第9条の3は、医療法 第14条の2 第1項の第1号から第3号までに掲げる事項などを、その診療所の入口、受付または待合所の付近の見やすい場所に掲示することを、管理者に求めています。第1号から第3号は、管理者の氏名、診療に従事する医師または歯科医師の氏名、その診療日と診療時間です。

名前とあわせて確かめておきたいのが、診療時間です。ホームページとGoogleの表示だけを直して、入口の掲示が古いまま残る。逆に、掲示は直したがホームページが古い。名前を見比べるときは、同じ流れで診療日と診療時間も見比べる順番になります。Googleの検索で自分のサイトがどう見えているかは、サイトを出したあとに見る画面の記事で確かめ方を並べています。

今日、見比べられる場所

  • 入口の看板と、駐車場や道路脇の案内板 ── 医院名と、後ろに付いている「○○科」の表記
  • ホームページのヘッダー、フッター、ページの題名(ブラウザのタブに出る文字) ── 同じサイトの中で表記が割れていることがあります
  • Googleビジネスプロフィールの名前 ── 患者が地図で見るのはここです
  • 入口・受付・待合所の付近の掲示 ── 管理者の氏名、診療に従事する歯科医師の氏名、診療日と診療時間
  • 領収書、封筒、予約票 ── 患者の手元に残るもの

見比べたうえで、表記のゆれだけなら、揃えるかどうかは医院の判断です。診療科名として認められていない言葉が混じっていた場合は、そちらが先になります。

まとめ ── 名前のゆれと、診療科名は別問題

医院の名称は広告してよい事項に入っており、略称や英語名も使えるとされています。看板とホームページで表記が違うこと自体は、患者が同じ医院だと分かるかどうかの問題です。一方、名前の後ろに付ける診療科名は政令で決まっており、認められていない言葉は、広告できる診療科名と並べても通りません。見比べるときは、この2つを分けて見てください。

参考にした情報源

条文もガイドラインも改正されます。個別の表記が広告として認められるかどうかは、最終的には所管の保健所の判断になります。迷う表記は、直す前に確認しておくほうが手戻りが少なくて済みます。

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この記事を書いた人

近藤 宏海のアバター 近藤 宏海 代表取締役

近藤 宏海(こんどう ひろみ)/株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役。歯科医院の開業から日々の運営まで、事務の現場を担ってきました。自社で歯科医院向けのWebアプリ「事務長AI」と、歯科医師向けアプリ「シカノバ」を開発・運営しています。

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