ドローンで撮ってほしい。そう決めたときに、まず引っかかるのが「うちの場所で、そもそも飛ばせるのか」です。資格を持った人がいることと、その場所でその飛び方ができることは、制度のうえでは別の話です。この記事は、航空法の仕組みを頼む側の目線で並べ直したものです。どの業者が良いという話はしません。
※ 以下は制度の説明です。個別の場所・機体・飛び方について飛ばせるかどうかを判断するものではありません。実際の可否は、国土交通省の最新の情報と、依頼先の事業者の証明書でご確認ください。
最初の分かれ目は、特定飛行に当たるかどうか
国土交通省の無人航空機の飛行許可・承認手続のページは、屋外で飛ばす機体のうち100g以上のものについて手続きを説明しています。そのうえで、大臣の許可や承認が要る空域・飛び方を特定飛行と呼び、これに当たる場合は原則として手続きが必要だとしています。
そして同じページには、必要な許可・承認を取らずに飛ばした場合、懲役または罰金の対象になると書かれています。頼む側にとっても、ここは他人事ではありません。撮影の当日に止まるより、頼む前に確かめるほうが安く済みます。
カテゴリーは3つ。分かれ目は「人の上を飛ぶか」
飛行の形は、危なさの度合いで3つに分けられています。下の行にいくほど、危ない側です。
| 区分 | どういう飛び方か |
|---|---|
| カテゴリーⅠ | そもそも特定飛行に当たらない飛び方。航空法上の許可・承認の手続きは要らない |
| カテゴリーⅡ | 特定飛行のうち、経路の下に人が入らないようにしたうえで飛ぶもの |
| カテゴリーⅢ | 特定飛行のうち、飛ぶ経路の下に人が入らないようにする措置を取らないもの。つまり、関係のない人の頭上を飛ぶ場合 |
ここで出てくる「人が入らないようにする措置」は、制度上立入管理措置と呼ばれます。操縦する人と、その補助をする人以外を、飛行経路の下に入れないようにすることです。敷地に人が出入りする医院や店舗では、ここが実務上いちばん難しいところになります。休診日の朝いちばんを提案されるとしたら、この理由が考えられます。
資格があれば手続きが要らない、とは限りません
ここで、資格と手続きの関係が分かれます。同じページによれば、技能証明や機体認証を持っているかどうかにかかわらず、個別に許可・承認を受けなければならない飛び方があります。挙げられているのは、次のようなものです。
- 空港などの周辺での飛行
- 高さ150m以上の上空での飛行
- 催し物が行われている場所の上空での飛行
- 危険物を運ぶ飛行、物を落とす飛行
- 総重量25kg以上の機体の飛行
一方、それ以外の特定飛行――人口集中地区の上空、夜間、目視の外、人や物から30mの距離が取れない飛行で、機体が25kg未満のもの――については、条件がそろえば個別の許可・承認を不要にできる、とされています。その条件が、立入管理措置に加えて、操縦者の技能証明・機体認証・飛行マニュアルの作成などです。
さらに注記があります。夜間の飛行と、目視の外での飛行をこの形で行うには、技能証明の限定変更が要ると書かれています。技能証明には飛ばせる条件の限定が付いていて、それを外す手続きがある、ということです。資格の名前だけでは、どこまで飛ばせるかは決まりません。証明書に何が書かれているか、そして国の許可・承認を取っているかの両方で決まります。
資格と国の手続きは、別々に効きます
法律の原文(航空法)で、しくみを短く確かめておきます。
航空法第132条の86第2項によると、日中に飛ばすこと、機体を目で見ながら飛ばすことなど、6つの決まりがあります。この決まりから外れてよいのは、資格を持つ人が国の認証を受けた機体(機体認証)を使う場合です。人の上を飛ぶなら、一等の資格と第一種の認証の組み合わせに限られます。それ以外で決まりから外れて飛ばすときは、係留などの方法を除き、同じ条の第5項のとおり、前もって国の承認を受けて、そのとおりに飛ばします。
航空法第132条の43第2項によると、資格の証明書に限定が付いている人は、その範囲でしか特定飛行ができません。ただし、国の許可・承認を受けて飛ばす場合などは除かれています。
頼む側としては、証明書にどんな限定が付いているかと、国の手続きをどう取るか(取ってあるもので足りるか、今回のために申請するか)の2つを聞くと、話が早く進みます。
最近の変更が2つあります
制度は動いています。同じページのお知らせから、頼む側に関係しそうなものを2つ。
- 総重量25kg以上の機体は、第三者に対する賠償責任保険への加入が要ります。令和7年10月1日以降に新しく許可・承認を申請する場合が対象で、申請書に保険の記載が必須になったと説明されています
- ホームページ掲載機体・掲載団体の技能認証による手続きの省略が、廃止されました。令和7年12月18日の施行です。以前の申請の複製や変更申請が使えなくなる場合があることも案内されています
2つ目は、事業者側の事務の話に見えますが、去年と同じやり方でいけます、という説明を鵜呑みにできないということでもあります。
頼む前に、この4つを聞いてください
専門用語で言い合う必要はありません。次の4つを、そのまま聞けば足ります。
- うちの場所は、特定飛行に当たりますか。当たるなら、どの区分ですか。当たらない(カテゴリーⅠ)なら、航空法上の許可・承認の手続きは要らないことになります
- 許可・承認は、取ってありますか。前もってまとめて取ってあるのか、今回のために申請するのか。いつまで有効ですか。申請はオンラインの仕組みで行われ、許可書は電子データで受け取れると説明されています。写しを見せてもらえます
- 撮影の日、経路の下に人が入らないようにする段取りは、どうしますか。誰が見張るのか、通行人が来たら止めるのか。ここが具体的に返ってくるかが、いちばんの見分けどころです
- 保険には入っていますか。何が対象ですか。機体の重さによっては、制度上も加入が求められます
この4つに、その場で答えられない相手に無理に頼む必要はありません。逆に、できない飛び方をはっきり「できません」と言う相手のほうが、当日に止まりません。
なお、飛ばす前の手続きは機体の登録から始まり、飛行計画の通報や飛行日誌の作成といった段取りも定められています。頼む側がすべてを覚える必要はありませんが、これだけの段取りがある仕事だということは、日程を決めるときに知っておくと役に立ちます。
参考にした情報源
- 国土交通省 無人航空機の飛行許可・承認手続 ── 特定飛行とカテゴリーの区分、立入管理措置、個別の許可・承認が要る飛行、限定変更、保険と審査要領の改正
- 国土交通省 飛行計画の通報・飛行日誌の作成 ── 飛ばす前後に定められている段取り
- e-Gov法令検索 航空法 ── 第132条の43(技能証明の限定)、第132条の85(飛行の禁止空域)、第132条の86(飛行の方法)
※ 航空法と関係する運用は改正されます。この記事は、上に挙げたページを当社が確認した時点の記載にもとづいています。実際に飛ばすかどうかの判断は、必ず最新の情報でご確認ください。航空法以外の決まりや、土地・建物の管理者の了解については、この記事では扱っていません。
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