クチコミを頼むとき、越えてはいけない線

クチコミを頼むとき、越えてはいけない線

「クチコミを書いていただけませんか」。この一言は、頼み方しだいで景品表示法にもGoogleのポリシーにも触れます。そして医院の場合、もう一段あります。医療法です。厚生労働省の指針は、医院の依頼にもとづく体験談には誘引性が生じると書いています。見返りを渡したかどうかは、そこに書かれていません。説明を求められるのは、書いた人ではなく頼んだ側。公開されている3つの決まりを、順番に読みます。

目次

問われるのは、書いた人ではありません

消費者庁は、ステルスマーケティングと景品表示法についての案内で、広告なのに広告だと分からない表示を規制の対象としています。ここでいう広告には、事業者が第三者に依頼したり指示したりしたものも含まれると書かれています。対象はテレビや雑誌だけでなく、SNSの投稿やレビューの投稿にも及びます。

そのうえで、規制の向き先がはっきり書かれています。消費者庁の案内は、規制の対象になるのは商品やサービスを供給する事業者、つまり広告主のほうだと明記しています。依頼を受けた第三者は規制の対象にならない、とも書かれています。

読み替えるとこうなります。頼んで書いてもらったクチコミが問題になったとき、答えなければならないのは医院です。書いた本人ではありません。ここが、この話のいちばん大事なところだと思います。

Googleが名指しで断っている頼み方

もう一方の決まりは、Googleマップの禁止または制限されているコンテンツに関するポリシーです。ここには、お店の側がやってはいけない行為が、かなり具体的に並んでいます。現場で出てくる頼み方と突き合わせると、次のようになります。

こういう頼み方ポリシー上の扱い
割引や無料のサービスと引き換えに書いてもらう禁止。見返りと引き換えに投稿を求める行為にあたります
「悪いことは書かないでください」と伝える禁止。否定的な投稿を妨げる行為として挙げられています
満足していそうな人にだけ声をかける禁止。肯定的な投稿だけを選んで募る行為にあたります
会計のその場で書いてもらう禁止。その場で書くことを求めたり強いたりする行為です
「担当した衛生士の名前を入れて」と頼む禁止。特定の内容を含めるよう頼むことはできません
スタッフに件数のノルマを課す禁止。一定数の投稿を募るよう求める行為として挙げられています
出典:Google マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー。左の列は、ポリシーの記載を医院の場面に置き換えて当社が整理したものです。

Googleは、見返りを渡すこと、否定的な投稿を妨げること、肯定的な投稿だけを選んで募ること、その場で書くよう求めること、特定の内容を含めるよう頼むこと、一定の件数を課すことを、販売者に禁止しています。ただしこれは、Googleが自社のポリシーについて書いていることです。医療法の話は、このあとに出てきます。

医院には、もう一段あります

ここまでの2つは、業種を問わない決まりです。医院には、これに加えて医療法の広告規制がかかります。読むのは厚生労働省の医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)です。令和8年3月30日の最終改正版が公開されています。

この指針は、医療法上の広告に当たるかどうかを、3つの要件で見ると書いています。受診を誘う意図があること(指針はこれを誘引性と呼びます)。医院や歯科医師の名前が特定できること。そして医業や歯科医業に関する中身であること。3つがそろえば広告です。紙かウェブかは問われません。

そのうえで、禁じられる広告が並びます。虚偽。比較優良。誇大。公序良俗に反するもの。そして、「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく」もの、すなわち「治療等の内容又は効果に関する体験談」です。指針はさらに、体験談に書かれた中身がそれ自体としては広告してよい範囲に収まっていても、広告は認められないとしています。理由も添えられていて、感想は一人ひとりの状態によって当然に異なるので、誤認を与えるおそれがあるから、というものです。

では、Googleマップに付くクチコミはどうなるのか。指針には、なお書きが置かれています。個人が持っているサイト。SNSの個人アカウント。外部の会社がやっている、いわゆるクチコミの場。そこに載った体験談について、医院が広告料などの費用を肩代わりする便宜を図り、載せてほしいと持ちかけている。指針はこれを例として挙げ、そこに「など」と続けています。そうした誘引性が見当たらなければ、医療法上の広告にはあたらない、という書き方です。見落とせないのは、この「など」のほうです。費用の肩代わりは挙げられた例のひとつで、誘引性が生じる形がこれだけだとは、指針は書いていません。

裏返すと、頼んだ瞬間に扱いが変わります。同じガイドラインのQ&Aには、医院が患者やその家族に、有償か無償かを問わず、良い内容の体験談を投稿してほしいと持ちかけたなら、その体験談には誘引性が生じる、と書かれています。反対に、医院の影響が及ばないところで患者や家族が推薦しているだけなら、誘引性は生じないとも書かれています。線を分けているのは、書かれた中身ではなく、医院が働きかけたかどうかです。

景品表示法とも、Googleのポリシーとも、組み立てが違います。景品表示法が問題にするのは、広告なのに広告だと分からないこと。Googleが問題にするのは、見返りと内容の指定。医療法の側は、誘引性が認められた体験談は、中身が穏当でも広告として認められないという形です。

ひとつ、範囲も書いておきます。禁じられているのは、治療等の内容や効果についての体験談です。待ち時間や受付の応対にしか触れていない書き込みは、この文言が名指ししている対象ではありません。ただし、どこからが治療の内容や効果の話になるのかを決めるのは、当社ではありません。

「声をかけるだけ」も、依頼です

Googleのポリシーには、認められる行為も書かれています。見返りを渡さず、評価や内容に影響を与えようとせずに、実際に体験したことの投稿を募ったり促したりすること。これは許可されると明記されています。ただしこれは、Googleが自社のポリシーについて書いていることです。Googleのポリシーで許可される行為であっても、医療法の話は別に残ります。

医療広告等ガイドラインの側は、書き方が違います。許される形を挙げるのではなく、誘引性が生じる場合を挙げています。今回読んだ厚生労働省の3つの資料から、クチコミの頼み方に関わるものを書き出します。ここに並べたもので全部ではありません。指針は費用の肩代わりの例に「など」と添えていますし、書いた人が誰かによって誘引性が生じる場合も、このあとに出てきます。

  • 医院の依頼にもとづく手記であるか、医院から謝礼を受けている、またはその約束があるとき
  • 医院が広告料などの費用を肩代わりする便宜を図ったうえで、載せてほしいと持ちかけているとき
  • 見返りの有無にかかわらず、良い内容の体験談を書いてほしいと持ちかけたとき
  • 医院に頼まれたクチコミの場の運営者が、投稿を医院に都合よく編集しているとき
  • 医院が編集を頼んでいなくても、そのように編集されたクチコミの場の運営費を、医院が事後的に負担しているとき

ここで、1つめをもう一度 読んでください。「医院の依頼にもとづく手記」には、見返りの有無も、内容を指定したかどうかも書かれていません。指針は、患者本人が自分で書いた手記であっても、それが医院からの依頼にもとづくものであれば、誘引性を有するものとして取り扱うのが適当だ、としています。

つまり、「クチコミを書いていただけませんか」という声かけは、依頼です。見返りを渡さず、内容も評価も指定しなかったとしても、その声かけから書かれた体験談は、上に並べた1つめに入ります。見返りと内容の指定だけを避ければよい、という話ではありません。

5つめも、歯科では遠い話ではありません。歯科のポータルサイトやクチコミの場に、毎月の掲載料を払っている医院があります。Q&Aが見ているのは、その場が医院に都合よく編集されている場合です。編集を頼んだのが医院でなかったとしても、あとからその運営にかかるお金を医院が持つなら、その編集された体験談に誘引性が生じると考えられる、と書かれています。編集を頼んでいないから関係ない、とは読めません。自院がどこに、何の名目で、いくら払っているか。それを一度 書き出しておくことをおすすめします。

ですから当社は、「ここまでなら大丈夫」という線を示しません。この記事が書けるのは、公開されている資料が「禁止」「誘引性が生じる」と名指ししているところまでです。踏み外したときに説明を求められるのは当社ではなく、医院だからです。頼むかどうか、頼むとして何をどう頼むかは、都道府県の窓口や、医療広告にくわしい専門家に確認してから決めてください。

スタッフと、その家族が書いたとき

Googleは、利益相反にもとづく投稿を、評価の操作として禁止しています。利益相反にあたるものとして、現在または過去の雇用関係、契約や顧問の関係、そして家族関係などが挙げられています。

つまり、スタッフ本人や、その家族が自院に投稿すること自体が、この定義に入ります。開院したばかりでクチコミがゼロのとき、身内に頼みたくなる気持ちは分かります。ただ、そこで入った数件のために、あとから入る本物まで疑われることがあります。

ここは、医療広告等ガイドラインの側にも記載があります。書いた個人が、医院の経営に関与する者の家族などであって、医院の利益になると認められるときには、誘引性があるものとして扱う、というものです。さらにウェブサイト等の事例解説書は、医院のスタッフ自身が書いた体験談も、スタッフが患者の体験を代わりに書いたものも、患者が書いたものと同じように認められないとしています。Googleのポリシーと、同じ方向を向いています。

先に決めておくのは、たぶん一行で足ります。身内は書かない。これを最初に言葉にして共有しておくほうが、あとから消して回るより早いです。

返信も、医院が書く文章です

Googleのポリシーは、健康や医療についての誤解を招く情報や虚偽の情報を含む有害な投稿を、誤った情報として禁止しています。これは投稿する側だけの話ではありません。クチコミへの返信も、医院が書く文章です。効果を約束する書き方や、診療内容の言い切りは、ここで一段 慎重になるところです。

逆に、知っておくと落ち着ける記載もあります。ポリシーの個人情報の項目には、自分の名前で開業している専門家について書かれていて、その例として医師が挙げられています。こうした場合、氏名が含まれること自体は認められるとされています。名前が出ているという理由だけで削除を求めても、そこは通らないという前提で構えたほうが、対応が早くなります。

低い評価への返信で何を書かないかは、口コミサイトの低評価、返信すべきかどうかの記事で扱っています。

今日、お金をかけずにできること

  1. 受付で使っている案内文や声かけを、そのまま書き出す。それが指針のいう「依頼」に当たるかどうかを決めるのは、当社ではありません。書き出したものを持って、窓口や専門家に相談するところまでが院内の仕事です
  2. 「身内は書かない」をスタッフに一度 伝える。ルールというより、守るための約束として
  3. 返信を、直近のぶんだけ読み返す。治る・効くといった言い切りが混ざっていないか
  4. 自院のサイトに、クチコミを貼っていないか確かめる。事例解説書は、口コミサイトから転載したものを、広告が禁止される事例として挙げています

どれも費用はかかりません。かかるのは読み返す時間だけです。そして、院内でできるのはここまでです。判断は、資料を持って外に聞いてください。

参考にした情報源

※ この記事は、上に挙げた資料を当社が確認した時点の記載だけをもとに書いています。資料は改定されます。また、個々の表現が広告に当たるかどうかを判断するのは、当社ではなく行政です。実際の運用は、最新の資料と、必要に応じて専門家の確認をあわせてください。

院内を、Googleマップの中へ

受付・待合室・診療室を360度で撮影し、医院のGoogleマップに掲載します。撮影は、お昼休みなど昼間の診療していない時間に伺います。Googleビジネスプロフィールをお持ちでない医院さまは、作成からお受けします。集患と発信全体のご相談は、マーケティング・クリエイティブのページにまとめています。

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この記事を書いた人

近藤 宏海のアバター 近藤 宏海 代表取締役

近藤 宏海(こんどう ひろみ)/株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役。歯科医院の開業から日々の運営まで、事務の現場を担ってきました。自社で歯科医院向けのWebアプリ「事務長AI」と、歯科医師向けアプリ「シカノバ」を開発・運営しています。

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