口コミサイトの低評価、返信すべきかどうか

口コミサイトの低評価、返信すべきかどうか

口コミサイトに低い評価が付いたとき、返信するかどうかは医院の判断です。ただし返信の文面には、医療法の広告規制と個人情報保護法の両方が関わってきます。返信を書いているのが医院である以上、その文面は院長個人の感想ではなく、医院が外に向けて出す表示として扱われる場面があるからです。この記事は、返信を書く前に確認しておきたい点を、条文の原文から並べます。

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返信も「広告」の枠組みに入りうる

この記事で読んだのは、医療法とその施行規則、それに個人情報の保護に関する法律です。医療法 第6条の5 は、医業・歯科医業や病院・診療所について、患者を誘引するための表示を広告と位置づけ、内容や方法に基準を課しています。口コミサイトへの返信は医院が作成し、不特定多数が閲覧できる場所に残ります。院長個人の発言ではなく、医院の表示として見られる可能性がある、という前提で書く必要があります。

効果を主張する反論は、体験談の広告に近づく

医療法施行規則 第1条の9 第一号は、患者やその他の者の主観または伝聞にもとづく、治療等の内容や効果に関する体験談の広告をしてはならないと定めています。低評価の口コミには、治療の効果がなかったという投稿者の主張が書かれていることがあります。ここで医院が、効果は出ている、改善している患者が他にもいる、と反論すると、患者の主観的な体験談に対して、治療の効果そのものを語る形になります。反論のつもりが、規制されている体験談の広告に近づいてしまう書き方です。

この条文が禁じているのは、あくまで患者の主観・伝聞にもとづく体験談を広告として使うことです。返信で書けるのは、事実として確認できる経過(来院日・実施した処置の種類など、患者を特定しない範囲で)に留め、効果の有無そのものへの言及は避けたほうが、この基準との距離が近くなります。

返信の中に、患者を特定できる情報を書かない

個人情報保護法 第2条 第3項は、病歴を「要配慮個人情報」に含めています。第27条 第1項は、一部の例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。口コミサイトへの返信は不特定多数が読める場所に公開されます。返信の中で具体的な処置名や来院時期を名指しすると、投稿者本人だけでなく、それを読む第三者にも、その人がどんな治療を受けたかが伝わってしまいます。

投稿者はすでに口コミの中で自分の体験を書いていますが、それは投稿者本人の判断です。医院の返信が、投稿者の申告していない治療内容まで公開の場で確定させることは別の問題です。返信で処置の内容や来院時期に触れず、ご意見への感謝を伝えたうえで、詳しい状況は医院まで直接連絡してほしいと案内する形で、個別のやり取りを非公開の窓口に移す書き方が、この条文との距離を保ちやすくなります。

返信するかどうかより先に、書ける範囲を決めておく

低評価への返信は、感情的な反論になりやすい場面です。ここまで見た条文をふまえると、返信の中で避けたいのは、治療の効果そのものを主張すること、そして患者を特定できる処置内容や時期を書くことです。ここさえ外せば、返信するかどうかは医院の判断として残ります。あらかじめ返信で書いてよい範囲を院内で決めておくと、実際に低評価が付いたときに、感情に流されず一貫した対応がしやすくなります。

まとめ ── 返信も、医院の表示の一部

口コミへの返信は、私的な言い返しではなく、医院が外部に出す表示として扱われうるものです。医療法施行規則が禁じる体験談の広告、個人情報保護法が求める本人同意という2つの条文を意識すると、書いてよい範囲がおのずと絞られます。返信するかどうかを決める前に、まず何を書かないかを決めておくのが、この記事で確認した条文に沿ったやり方です。返信の手前の段階、つまり患者にクチコミを頼むときの線は、クチコミを頼むとき、越えてはいけない線で扱っています。

参考にした情報源

上のリンク先は、デジタル庁が運営する e-Gov法令検索の条文ページです。この記事に書いたことは、そこに表示される条文と一つずつ突き合わせられます。条文は改正で変わります。最終確認は、そのときの原文でお願いします。

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この記事を書いた人

近藤 宏海のアバター 近藤 宏海 代表取締役

近藤 宏海(こんどう ひろみ)/株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役。歯科医院の開業から日々の運営まで、事務の現場を担ってきました。自社で歯科医院向けのWebアプリ「事務長AI」と、歯科医師向けアプリ「シカノバ」を開発・運営しています。

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