医院のブログやSNSに、学会の資料や他サイトの文章を載せたくなることがあります。条文には「引用」という道が用意されていますが、条件は3つ重なっています。そして、条件を満たしても、もうひとつ別の条文の義務が残ります。この記事は、その条文を並べます。
原則は、権利が作った側にあります
著作権法 第21条は、著作者が、その著作物を複製する権利を専有する、としています。第23条 第1項は、公衆送信を行う権利を専有する、としており、括弧の中で、自動公衆送信の場合には送信可能化を含む、と書かれています。
ウェブサイトに載せる行為は、この2つに関わってきます。同法は、これらの権利を著作者が専有する、と書いています。専有とは、その人だけが持つという意味です。だから、使う側は例外の条文か、許諾のどちらかを探すことになります。自分が頼んで作ってもらったものでも、権利がどちらに残るかは別の話です。ロゴの場合はロゴを外注したら、著作権はどちらに残るかで扱っています。
引用の条文は、短い1文でできています
第32条 第1項です。前段は短く、公表された著作物は引用して利用することができる、と書いてあるだけ。条件はすべて後段に置かれています。引用が公正な慣行に合致するものであること。そして「かつ」で続けて、報道、批評、研究その他の引用の目的上、正当な範囲内で行われるものであること。この2つを満たさなければならない、という形です。
ここから読み取れる条件は3つです。
- その著作物が、公表されたものであること
- 公正な慣行に合致するものであること
- 引用の目的上、正当な範囲内で行われるものであること
後段は「かつ」でつながっています。同項の後段が「かつ」で結んでいる以上、慣行に合っていることと、目的上 正当な範囲であることの、両方が要ります。片方だけでは足りません。
目的の例として条文が挙げているのは、報道、批評、研究です。そのあとに「その他の」が続きます。同項は「その他の」で受ける形をとっており、報道・批評・研究は、引用の目的という大きなくくりの中の例として置かれています。そこで打ち止めという書き方ではありません。
国が出している資料には、別の項があります
第32条 第2項です。対象は、国等の周知目的資料。これを説明の材料として、新聞紙や雑誌をはじめとする刊行物へ転載できる、という定めです。ただし書きも付いていて、転載を禁止する旨の表示があるときは、この限りでない、とされています。
同項のただし書きによれば、禁止する旨の表示があるかどうかを、使う前に見ることになります。官公庁の資料だからそのまま使える、という書き方にはなっていません。
引用に当たっても、出所を書く義務が残ります
ここは、引用の条文だけを読んでいると通り過ぎる場所です。第48条 第1項の柱書は、各号に掲げる場合には、その著作物の出所を、複製または利用の態様に応じ合理的と認められる方法および程度により、明示しなければならない、としています。
その第1号に、第32条の規定により著作物を複製する場合が挙げられています。第3号には、第32条により複製以外の方法で利用する場合が挙げられており、こちらは、そのあとに列挙された別の規定について「その出所を明示する慣行があるとき」という条件が置かれています。
第2項は著作者名についてです。出所を示すときには、その著作物に表示されている著作者名も示す義務があります。外れるのは2つの場合で、出所を示すことに伴って著作者名が自然に明らかになるときと、その著作物が無名のものであるときです。同項が示すよう求めているのは、あくまで、その著作物に表示されている名前です。
切り貼りには、また別の条文があります
第20条 第1項は同一性保持権です。著作者には、自分の著作物と、その題号について、同一性を保つ権利があります。そして、意に反した変更や切除、その他の改変を受けないものとされています。同項は、中身だけでなく、題号のほうも対象に入れています。
第2項には、適用しない場合が4つの号で置かれています。第4号は受け皿で、前の3号のほかに、著作物の性質と、利用の目的や態様に照らして、やむを得ないと認められる改変、とされています。
写真に患者が写っている場合は、別の法律も関わります。個人情報の保護に関する法律 第20条 第2項は、要配慮個人情報の取得に、あらかじめの本人同意を求めています。同意なしで取れるのは、同項の各号に当たる場合だけです。除かれる場合として並んでいるのは、法令に基づく場合、生命・身体・財産の保護に必要で本人の同意を得ることが困難なとき、公衆衛生の向上や児童の健全な育成の推進に特に必要で同意を得ることが困難なとき、などです。同項は、取得の段階に同意を置いています。載せる段階の話とは別に、撮る段階の話があるということです。
引用にならないときは、許諾の道です
第63条 第1項は、著作権者の側に、著作物の利用を他人へ許諾する道を認めています。第2項はその裏返しで、許諾を得た側が使える範囲を決めています。許諾に係る利用方法と条件、その範囲の中で利用できる、という書き方です。
著作権法 第63条 第2項によれば、許諾を得たあとに使える範囲は、その許諾で決めた利用方法と条件の中に限られます。ブログ用に許諾を得たものを、チラシへ回す前に、その範囲を見直すことになります。
載せる前に、確かめられること
以下は、上に並べた条文から当社が整理した確認の順番です。条文がこの順序を定めているわけではなく、これですべてでもありません。写真に人が写っている場合や、商標が入っている場合には、別の権利が関わります。
- そのもとの著作物は、公表されたものか
- 自分の文章と、引いてきた部分が、読んで区別できる形になっているか
- 引いてきた部分が、記事の中で何のために置かれているか ── 目的を1行で書けるか
- 出所を書いたか。著作者名を書いたか
- 官公庁の資料なら、転載を禁止する旨の表示がないか
- 切り取ったことで、もとの意味が変わっていないか
- 許諾を得たものなら、その許諾の範囲に、いまの使い方が入っているか
まとめ ── 短い条文に、条件が詰まっています
引用の条文は1項だけですが、公表されたものであること、公正な慣行に合致すること、目的上 正当な範囲であることが重なっています。そのうえで、出所の明示は別の条文の義務として残り、著作者名まで求められます。改変には同一性保持権の条文があり、引用に当たらない使い方には許諾の条文があります。条文の側は、使ってよい場面を、条件の重なりで描いています。載せる前にいったん止まって、この重なりを数えておくことになります。
参考にした情報源
- デジタル庁 e-Gov法令検索 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号) ── 第20条、第21条、第23条、第32条、第48条、第63条
- デジタル庁 e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号) ── 第20条
この記事は、条文に条件と義務が書かれている部分を並べたものです。どこまでが「公正な慣行」や「正当な範囲」にあたるかは、個々の事案で判断されます。写真に写った人の権利、商標、素材サイトの利用規約は、それぞれ別の話になります。条文は改正で変わります。判断に迷う場合は、弁護士など専門家にご確認ください。
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